2018年1月19日、現代日本を代表する音楽家である小室哲哉が会見を開き引退を発表した。
わたしは子供の頃からTM NETWORKを聴いて育ち、大人になってからは何度もTM NETWORKのライブに足を運ぶなど、まあ簡単に言ってしまえばTM NETWORKのファンであった。
そのTM NETWORKの中心人物である小室哲哉の引退を一人のファンとしてどう受け止めたのかについて書いていきたい。
わたしとTM NETWORK
わたしとTM NETWORKの出会いは1991年に遡る。
当時の友達がTM NETWORKのファンで、彼女にカセットテープを貸してもらったのが最初だったはずだ。
おそらくカセットに入っていたのはアルバム「EXPO」や「CAROL」あたりだったと思う。
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それらのカセットを聴き込むうちにTM NETWORK(当時はTMN)のサウンドをすっかり好きになっていった。
ただ当時はTMにドップリというわけではなく、いくつかある好きなアーティストの中の一つという感じだった。
TK全盛期とわたし
1993年にTMNが解散すると、小室哲哉はプロデュース業に専念し、ご存知の通り「小室ファミリー」と呼ばれるアーティスト群が形成され、一つの時代を作り上げていく。
この頃のわたしはテレビやラジオから聴こえてくるTKサウンドにもちろん触れてはいたのだが、それに対して好意的な感情も嫌悪感も抱かなかった。
ただ、そこにあるものとしてBGM的に聴くだけの時期だった。
2007年、再びTM NETWORKにハマる
時は過ぎて2007年。
この年わたしは「TM NETWORK tribute LIVE」と銘打たれたライブに足を運んだ。
トリビュートとタイトルにあるが、実際の演者には宇都宮隆と木根尚登が含まれており、その他のバンドメンバーも浅倉大介、葛城哲哉、阿部薫という往年のTM NETWORKのサポートメンバーで構成された、いわば「小室哲哉抜きでTM NETWORKの曲を演奏する」ライブだったのだ。
このトリビュートライブは2003年から隔年で開催されており、もちろん小室哲哉もこのライブの開催を許可していると聞いている。
さてそんなトリビュートライブを観たわたしは昔好きだったTM NETWORKへの熱が再燃する。
初めてTM NETWORKを観た2008年
わたしがトリビュートではなく初めて本物のTM NETWORKを観たのは2008年、「TM NETWORK TOUR 2008 SPEEDWAY」のZepp Tokyo公演だった。
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初めて生で観る小室哲哉はステージドリンクとしてコーラを飲んでメンバーからツッコまれるなど、その奇人っぷりを存分に発揮していた。
2008年11月、小室哲哉詐欺罪で逮捕
わたしがすっかりTM NETWORKに心を奪われたところで起きたのがこの事件である。
ある朝わたしが目覚めてTwitterのタイムラインを見ると、そこには小室哲哉の文字がたくさん踊っていた。
慌ててテレビを付けると「小室哲哉が詐欺罪の疑いで事情聴取を受けている」との報道。
気が気じゃないまま会社に行くと、わたしがTM NETWORKのファンであるとはつゆ知らない同僚が普通の雑談として「小室哲哉逮捕されたねー!」などと話しかけてくる。
同僚に悪気がないことはわかるのだが、こちらとてその件については過敏になっている。
「まだ逮捕されてないです、事情聴取の段階です!」
と顔を真っ赤にしてマジレスしてしまった。
しかしその日の仕事中ついに「小室哲哉逮捕」の一報は届いてしまった。
2009年5月有罪判決~2011年KEICOくも膜下出血
もう皆様ご存知の通りその後小室哲哉には執行猶予付きの有罪判決が下された。
判決後の記者会見でTK全盛期とは別人のように小さくなって反省する姿を覚えている人もいるかもしれない。
この後小室哲哉は5年の執行猶予期間を過ごす。
その間にもTwitterなどのSNSをたまに更新していたため、執行猶予期間中の彼の様子はそこから伺い知ることができた。
そんな中飛び込んできたのがKEICOがくも膜下出血で搬送されたというニュースだ。
またしてもワイドショーは大騒ぎ。
この時は小室の逮捕などでKEICOに負担がかかっていただろうから、という感じでKEICOに同情的な報道が多かったように記憶している。
TM NETWORK再活動と執行猶予期間終了
2012年からはTM NETWORKとしての活動が4年ぶりに再開され、2013年、14年と継続的にTM NETWORKの活動は続いた。
執行猶予期間の終了について本人から何らかのアナウンスがあったわけではないが、2009年5月に判決が出てから5年ということは2014年5月には執行猶予期間が終わったのだろう。
執行猶予期間中は海外へ行くことはできないため、2014年に小室哲哉のTwitterで海外へ行ったツイートがあった時は「おお、ついに!」という感じだった。
そして2014年はTM NETWORKの30周年だった。
わたしが一番TM NETWORKを多く観たのがこの2014年だった。
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TM NETWORK30周年プロジェクトの終焉とSNSに現れ始めた異変
2015年3月の横浜アリーナ2daysをもって TM NETWORKの活動は一区切りとなった。
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その後の小室哲哉の活動はまたSNSで追う日々になった。
彼のSNSに異変を感じ始めたのは2017年。
2017年10月の投稿に「僕は、引退しないのかな?」とあるように、小室哲哉の視野に「引退」という選択肢があることがうかがえる。
他にも、2017年7月に小室哲哉と浅倉大介のユニット「PANDORA」が結成された際、浅倉大介が雑誌のインタビューで「小室が“このユニットは自分の音楽人生で最後に結成されるユニットかもしれない”と言った」と発言し、ファンの間でざわついたことがあった。(B-PASS ALL AREA Vol.6 2017年9月13日発売)
インタビュー掲載誌についてフォロワー様から情報提供いただきました。ありがとうございます。
このように2017年の小室哲哉の複数の発言により、ファンは
- 小室哲哉の選択肢に「引退」があること
- そろそろ引き際を探っているのではないかということ
は薄々認識していた。
2017年、文春による不倫疑惑の誤報
2018年1月17日に文春により小室哲哉が不倫しているという誤報が発信された。
当初は不倫疑惑ということだったが、文春の発信に対して本人が否定しているというオフィシャル情報もあった。
この時点でのわたしの感想は
- 今後3年ぐらいの活動予定は白紙になるだろう
- 世の中の流れがアンチ不倫に傾いてるところにこのニュースで不倫のイメージが付いてしまうと、小室哲哉ブランドのリブランディングは相当難航するだろう
- 若いアーティストならまだしも小室哲哉の現年齢(59)を考えると今からのリブランディングは無理では?
という感じだった。
小室哲哉本人会見
小室哲哉が会見を行い、音楽活動を引退すると発表した衝撃的事実ををわたしは最初Twitterで知るところになった。
インターネットのニュースサイトで内容を「文字で読んだ」時点での感想は、
- まさか引退するとは思わなかった
の1点に尽きた。
ノーカット会見動画をすべて見た後の感想
その後帰宅してからYouTubeで会見動画をすべてノーカットで見た。
全部で2時間ほどあったと思う。
まず、彼の様子はどう見ても介護疲れから軽度の鬱状態になっているようにしか見えないし、この状態で引退などの重大な決断をするべきではないのではないかと感じた。
会見の中でも「僕はバンドをやって東京ドームをいっぱいできたという身ではないので」などの発言から、うつ病に特有の認知の歪みが発生しているのではないかと感じた。(実際にはTMNでもglobeでも東京ドームをいっぱいにしてきた)
原因がどうあれ、59歳で(おそらく)うつ状態になってしまった小室哲哉。
もしこれが小室哲哉ではなく普通の会社員だったら、59歳で鬱状態に陥ったら確かに休職ではなく退職を選ぶかもしれない、と考えるともしかしたら今回の「引退」という選択肢ももしかしたら妥当な範囲内なのかもしれない。
また、会見の最後に小室哲哉が問題提起していた介護疲れなどの問題について。
小室哲哉とKEICOほどの深い愛をもってしても介護疲れには勝てないという現実を目の当たりにしてしまったので、個人的な話ではあるが今後家族が要介護になった時は迷わずアウトソーシングをフル活用しようと感じた。
作詞家でもある彼の言葉は会見でも最後まで本当にリリックだった。
会見の全文書き起こしも読んだが、文字では伝わらないニュアンスもあるから是非全員会見動画ノーカット版を見てほしい。
執行猶予付き有罪判決が出た時に「僕には音楽しかない」と頭を下げて世間に許しを請っていた男に「僕は音楽を引退します」という会見をさせるなんて、こんな残酷なことがあるだろうか。
ともあれこの会見の後、世論は完全に悲劇の音楽家小室哲哉に味方した。
会見の翌週に発売予定だったPANDORAのCDも発売中止になることなく無事発売されたし、その事に異議を唱える意見も今のところ見当たらない。
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わたしももちろんPANDORAのCDを購入してきた。
世論は小室哲哉を支持しているということを微力ながらも数字で示したいからだ。
おわりに
小室哲哉は常に我々固定ファンではなくマスを見ている。
それは今回の会見でもそうだった。
マスに受け入れられるような音楽を作れなければ自分の存在価値はないと、はっきりそう言っている。
それは我々固定ファンから見たら悲しいことではあるのだが、本人がその道を選んでいるのだから応援するしかない。
とにかく小室哲哉には今すぐ十分な休養を取ってほしい。
それが3年であっても5年であっても構わない。
マスがどうあれ、我々固定ファンは小室哲哉の復帰をいつまでも心のどこかで待ち続けているだろう。