【ライブレポート】People In The Box 10th Anniversary「The Final」@ EX THEATER ROPPONGI【9500字長文注意】

【ライブレポート】People In The Box 10th Anniversary「The Final」@ EX THEATER ROPPONGI【9500字長文注意】

2018年1月21日。

見事な冬晴れとなったこの日、わたしは1年ぶりにPeople In The Boxのライブを観るためにEXシアター六本木に向かった。

他の街とは明らかに異質な、豪華すぎる建物の数々を通り過ぎてたどり着いたのがこのライブハウス。

 

派手かよ!

 

People In The Boxの地味なイメージに似つかわしくない派手な電飾が出迎えてくれた。

 

Peopleのライブを見るのが1年ぶりになった理由

さてわたしがPeople In The Boxが好きであるにも関わらずライブに行くのが1年ぶりとなったのには深い理由がある。

いやそれほど深くはない理由なのだが、要するにわたくしも歳を取ってオールスタンディングのライブはもうキツいと感じるようになったのだ。

Peopleが去年「Things Discovered」リリースツアー10th Anniversaryツアーなどを行っていたことはもちろん知っていたが、「ふぇぇ…オールスタンディングは無理でちゅ…」というただ一点の理由で足を運ばなかった。

そういった理由で、Peopleのライブを見るのが2017年1月の「空から降ってくる vol.9 ~劇場編~」以来1年ぶりとなってしまった。

ライブに足を運ばないからといって決してPeopleから気持ちが離れた訳ではなく、家でCDを聴いたりTwitterで情報を得たり、いわば在家信者的にファン活動をしていたのだ。

 

最新ライブハウスの設備しゅごい…

さて今日は去年10周年を迎えたPeople In The Boxの10周年締めくくりライブである。

このライブ「10th Anniversary The Final」が発表された際スタンディングエリアと座席指定エリアがあることを知ったわたくしは「座席指定!マジで!行く行く!」と即最速先行に申し込んだのであった。

なお当日のお席は最速先行とは思えないほどお粗末な…いやなんでもないです

わたしが過去にEXシアターで観たライブはオールスタンディングのものだったため、「ふーん、まあ指定席つってもZeppみたいに平らなところにパイプ椅子並べるだけでしょ?」ぐらいの気持ちで会場内に入ってまぁビックリ。

なんと座席指定エリアはきちんと傾斜がついた階段状になっていて、しかもパイプ椅子じゃなくフカフカのなんかいい感じの椅子前の席と半分ズレた形で配置されてるではないか。

あなたが神か!

最新設備のライブハウスだとこんな事も出来てしまうとは本当に驚いた。

 

開演

さて空調効きすぎでちょっと暑いかな~ぐらいの中ライブが開演。

お馴染みのオープニングSEが流れてきて1年ぶりに観るPeople In The Boxのライブへの期待感が最高に高まる。

ちなみにこのオープニングSE、正式な曲名は知らないがわたしの中では勝手に「チクタクポーン」と呼んでいる。

 

M1:汽笛

 

 
もう一曲目からクライマックスである。

2012年にリリースされたアルバム「Citizen Soul」の最後を飾るこの曲。

2012年というとわたしがちょうどランニングを始めた年で、iPod nanoにこのアルバムを入れて河川敷を走りまくっていたことが走馬灯のように思い出される。

そんな個人的な思い出はどうでもいいとして、アルバムラストを飾るこの曲はどうしても感情移入して涙腺がユルガバになる。

在家信者なりにSNSはよくチェックしていたので波多野さんが喉を壊した一連の話ももちろん読んでいた。

ただ、この日のライブでは喉がおかしい感じは一切しなかったのでプロというのはすごいものだなと思った。

 

 

M2:火曜日/空室

 

 

2009年にリリースされたアルバム「Ghost Apple」の2曲目。

 

話は2009年に遡る。

わたしが初めてPeople In The Boxのワンマンライブを観たのがGhost Appleツアーの水戸ライトハウス公演だった。

Peopleの存在自体は2008年ぐらいから知っていて、残響レコード主催のイベントライブなどで何度か観たことはあったしリリースされたCDも聴いていたのだが、Peopleを聴くたびに脳が「このバンドにハマったらハマりすぎて絶対戻って来れなくなるぞ!」と強い警鐘を鳴らすのだ。

そのため2008年頃のわたしはPeopleから意識的に距離を置いて日々を過ごしていた。

そんな必死に踏んでいたブレーキが、一瞬で水泡と帰したのがこのミニアルバム「Ghost Apple」だった。

タワレコでGhost Appleを購入し、家に持ち帰って聴いたわたくしは気が付いた時には一番日にちが近かった水戸公演のチケットを買っていたのである。

脳に思考の余地を与えないPeople In The Boxの音楽。

あれほど危険だと本能が訴えていたのに、人間の意志はPeople In The Boxの音楽の前ではあまりにも脆弱だったのである。

さて、また思い出話が長くなってしまったがライブの2曲目「火曜日/密室」

「121グラム」と繰り返す歌詞が当時の自分に刺さりまくって何度も何度も聴いていたのを覚えている。

リリースから8年経って円熟味を増した火曜日/密室もまた良いものであった。

 

 

M3:聖者たち

 

 

ここで比較的新しめの2014年のシングル「聖者たち」。

People初のタイアップ曲ということが発表された当初は正直不安感しかなかったのだが、実際に発売された曲を聴いて妙に安心した記憶がある。

 

 

MC(波多野)

よく覚えていないが確か

・このライブが10周年記念イヤーの総括であること
この10年の始まりの曲をやります、という前フリから次の曲へ

みたいな流れだったかと思う。

 

M4:She Hates December

 

 
そう、Peopleの10年の始まりの曲、She Hates December。

2007年発売のPeopleのデビュー作Rabbit Hole」からの曲である。

わたしは別に懐古主義でもないし、December は聴けても聴けなくてもいいと思ってはいたものの、いざライブで聴くとやっぱり胸に来るものがあった

 

 

M5:犬猫芝居

 

 

これもファンに人気のある古い曲。

2007年リリースのアルバム「Frog Queen」に収録されている。

ご多分に漏れずわたくしも昔この曲の歌詞にどハマりしていた。

 

君は痛いのが好き?
僕は汚すのが好き
生きたまま死んだふたりに
僕はなってみたい

-People In The Box 犬猫芝居

 
さすがにあれから約10年経っているため今のわたしにこの歌詞が刺さるか?というと答えはNOなのだが、歌詞の世界観含めて常にアップデートし続けるPeopleがわたしは好きなのである。

 

 

M6:空は機械仕掛け

 

 
こちらは2015年リリースのアルバム「Talky Organs」から。

 

また最近の曲に戻るという振り幅の広いセットリスト

正直、昔の曲はライブで聴いた回数もすでに多いので、個人的にはまだライブで聴いた回数の少ない新しめの曲を多くやってくれるライブのほうがPeople In The Boxに関して言えば好みだ。

 

 

MC(波多野)

詳しい内容はまた覚えてないが、「そりゃ10年経てばメンバーもファンも10歳歳を取るよな~」とか考えてた記憶があるので、おそらくそんな話をしていたのだろう。

そりゃわたしもPeopleにどハマりした約8年前はライブ遠征とかしていたが、8年の間に様々なライフイベントを経てライフスタイルが変化し、体力も年相応に落ち、ついには「もうオールスタンディングのライブは無理ィ~!」という境地に至ったのだ。

8年前であればそこに混じっていたであろう客席前方のスタンディングエリアを眺めながら、こうやってファンも新陳代謝していくんだよなぁ、などと思いを巡らせる。

8年前には無かった白髪を染め、近距離のピントも合いづらくなる、それでもPeople In The Boxの音楽が変わらずそこにある、そしてニューアルバムまで発売されるというのは奇跡に近いと思う。

  

 

M7:無限会社

 

 

3日後に発売となるニューアルバム「Kodomo Rengou」からの最新曲「無限会社」。

直前のMCで「攻撃力の高い曲」と波多野が紹介した通り、アグレッシブな演奏が印象的。

のちの波多野のMCにもあった通り、この曲も1回聴いただけではあまり良さがピンとこない感じだったのでアルバムを買って聴きこんでから良さが分かってくるタイプの曲なのだろう。

  

M8:新曲

ここでタイトルの分からない新曲が演奏された。

おそらく「デヴィルズ&モンキーズ」なのではないかと思う。

歌詞には「ジェームスディーン」などの人名が入っており、何かと何かを対比している歌詞なのかな?と思った。

こちらもニューアルバムを買ってから改めて聴きこんでいきたい

 

M9:翻訳機

 
 
現時点でわたしがPeopleのなかで一番好きな曲である。

2014年のアルバム「Wall, Window」の1曲目を飾るこの美しい曲を是非上のオフィシャル動画から聴いてみてほしい。

 
 

M10:マルタ

 

 

2010年のアルバム「Family Record」からの曲。

もう約7年前のアルバムともなると、急にライブで聴いても曲のタイトルが思い出せず苦労した。

この曲は出来た当初山口大吾がマレットを使って演奏していたため仮タイトル「マレット」だった、というエピソードを記憶しているのだが、今日の演奏時はマレットではなく普通のドラムスティックを使って演奏しているように見えた。

いつからマレットを使わなくなったのか気になるので、ご存知のPeopleマニアの方がいらっしゃったら是非わたしのTwitterこっそり教えてほしい

 
 

M11:月

2014年のアルバム「Wall, Window」から。

 
この曲も涙腺大崩壊待ったなし曲だ。

個人的にこの曲のクライマックス出だし

 

きみが息を吸うときにぼくが吐くよ
ふたりは一対の呼吸

-People In The Box 月

 
という部分だと思っている。

つまり冒頭から涙腺大崩壊というわけだ。

 

 

M12:技法

 

 
2012年のアルバム「Citizen Soul」から「技法」。

 

この頃になるとわたしは贅沢にも「ああ、ずっと座りっぱなしっていうのも案外お尻に荷重がかかってしんどいもんだな」などと思い始めていた。

とはいえオールスタンディングで立ちっぱなしよりは全然ラクなので贅沢は言わないことにしよう。

 

 

M13:レテビーチ

 

 

これもM10のマルタと同じく2010年のアルバム「Family Record」からであえる。

 
そしてマルタと同じくこの曲もライブ中に「タイトルなんだっけ?」で苦労した。

7年の間の脳の退化と記憶力の低下を侮ってはいけないのである。

「なんかカタカナ4文字ぐらいの曲名だったよな…なんだっけ?セ○○ス?」

などと考えていて、結局ライブ中にタイトルは思い出せなかったのだが帰りのエレベーターで他のお客さんが「レテビーチやってよかったね!」などとはしゃいでいるのを聞いて「ハッ、レテビーチか」と思い出した。

全くカタカナ4文字ではなかった。

 

 

M14:大砂漠

 

 
2013年リリースの「Weather Report」から。

 
どこのMCだったか忘れたが、10周年で昔を振り返るMCの時にドラムスの大吾が「福岡時代、波多野はライブハウスでアンプを上に向けて演奏したいと言い張ってPA担当と小競り合いをしたりしていて、当時本当に大嫌いだった(意訳)」といった話をしていた。

そして時は経ち2013年、このアルバム「Weather Report」はアルバムであるにも関わらず曲と曲の間が切られておらず、70分1トラックという奇抜な試みがされている。

やってもやらなくてもいい、良く分からないことにこだわる」という姿勢は北九州時代から今も変わっていないんだな、と感じた「大砂漠」だった。

 

MC(大吾)

確かこの辺でもう一度MCを挟んでいたと思う。

恒例の大吾マンによるグッズ紹介はもちろんのこと、People In The BoxはMCも面白いバンドなのだ。

ボーカルの波多野が客席で歓声を上げた男性に対して「ありがとう」と言うが、次の瞬間にはそれを「思ってもないことですけどね」と言う。

このシニカルさがPeopleのMCの醍醐味であり、子供のころから「ピーナッツコミックス」などのシニカルなコンテンツを好んで読んできたわたしの好みと完全に一致するのだ。

 

M15:ニムロッド

 
2012年リリースのEP「Citizen Soul」からの1曲。

 

 
このEPリリース時点でPeopleの曲で一番好きだった曲だ。(現在は一番好きな曲は翻訳機に変わっている)

もう「好き」以外の語彙が出てこないのでとにかく聴いてほしい。

 

M16:旧市街

 
間違いなくPeople In The Boxの代表曲の1つである「旧市街」がライブ終盤で披露された。

2010年「Family Record」収録曲。

アニメーション作家の加藤隆氏の手によるMVと相まって話題となった楽曲だ。

最近のPeopleはライブのセットもごくシンプルで、それはとてもPeopleらしいとは思うのだがこの2010年頃の映像とライブのコラボレーションがあった時代も良かったなぁ、と懐かしく思った。

 

 

M17:木洩れ陽、果物、機関車

 

2017年に発売された10周年記念アルバム「Things Discovered」からの1曲。

老い」や「老化」を歌った曲だと思うのだが(※個人の意見です)、全く暗くなく「老いていく未来」へ前向きに向かっていく感じがする、とても勇気づけられる1曲である。

折しもこのライブの2日前には日本を代表する稀代の音楽家であった小室哲哉が自身の体調問題を原因に59歳での引退を発表した。

いつかは誰もが向き合わなければならない老いの問題。

そしてPeopleと出会ってから8年という歳月がもたらした自身の老い。

様々なことを考えさせられる1曲であった。

 

 

M18:かみさま

本編最後の曲はニューアルバム「Kodomo Rengou」の発売に先駆けてMVが先行公開されたばかりの新曲「かみさま」。

 

この曲は母性を神性に例えた曲だと思っている(※個人の意見です)。

最初にMVを見た時この曲の持つ力強さ心が大きく揺り動かされて、わけもなく涙が出そうになったことを覚えている。

そのバンドの一番新しい曲を好きになれるというのは非常に幸せなことだと思う。

 

 

アンコール

メンバーが出てきてまずMC。

波多野が「みんな今日のライブのことをどうやって知ったの?」と客席に問いかける。

要するに、

  • Peopleはほとんど音楽誌にも載らないし、情報発信元としてはTwitterぐらいしかない。
  • 波多野のTwitterフォロワーが約1万人で、今日六本木に集まっているのが約1000人
  • フォロワーの1割が来るというのは数字として大きすぎるので、他で情報を得ているのだろう。
  • いったいみんなどこでライブ情報を得たのだ?

という話だ。

この話を聞いた率直な感想としては「え、今どき音楽雑誌を読んでる人なんているの?」だった。

好きなアーティストのコラム等を読む目的で音楽雑誌を買う人はある一定数居るとしても、雑誌を「最新情報を得る場所」として捉えている人が果たして現代に存在するのだろうか。

MCの内容から推測するに今回のニューアルバム「Kodomo Rengou」のリリースに伴いインタビューが掲載される音楽雑誌「音楽と人」1誌のみということらしいが、正直雑誌を読むという文化は自分の中では数年前に廃れており、雑誌=終わったメディアという印象が強いのだ。

ただ、もし音楽と人にPeopleのインタビューが掲載されているのなら、その部分だけは読みたいのでアーティスト別で記事をオンライン販売してほしいぐらいだ。

 

EN1:ヨーロッパ

 

 
アンコールは1曲だけ。

Peopleのライブの最後の1曲としてすっかり定番の「ヨーロッパ」。

2008年発売「Bird Hotel」からの曲である。

静かに始まるこの曲だが、後半に行くにつれて熱量が上がり、最後のポエトリーリーディングのパートを超えた頃にはステージ上から発せられる音圧と情熱がこちらの感情に襲い掛かってくる。

ライブの最中のわたしの心の声を文字にするなら「押される!!!!押されるゥゥゥゥゥ!!!!!!!」である。

そして感情をグイグイ押されまくって気持ちが高まった頃、突如として演奏が終わる

ステージ上から押し寄せていたはずの熱波はスーッと引き、メンバーが挨拶をしてステージから去って行ってPeople In The Boxのライブは終わるのだ。

ダブルアンコールなどない

このシンプルさがPeople In The Boxらしいのだと思う。

 

終演後

終演後ライブハウスから出るときに手渡されたチラシの束にKodomo Rengouリリースツアーの日程が書いてあったので読もうとした。

 

おそらく8年前、Ghost Appleツアーの頃からチラシの文字サイズは変わっていないのだろう。

変わったのはわたしの目のほうだったのだ。

目の劣化により、この文字の小ささでは夜の闇の中ですぐツアー日程を確認することができなかった。

8年という月日の重みをこんなところで思い知らされたのであった。

1月23日追記:
たまたま手元にGhost Appleリリースツアーのチラシがあったので文字サイズを比較してみた。

Ghost AppleとKodomo Rengouの比較

なんと文字サイズは8年前より若干小さくなっていた
日程が確認できなかったのはわたしの目だけの問題とも一概には言えないだろう

あとついでだからGhost Appleツアーのチラシの表面も写真に撮ってみた。

Ghost Apple チラシ

リアルと幻像の垣根を溶かす、背徳のポップ・ミュージック」。

2018年声に出して読みたい日本語No.1間違いなしである。

ツアー日程は後でゆっくり確認することにして、わたしはライブハウスを後にした。

強すぎる空調で火照った身体に1月下旬の冷たい風が心地よい。

この夜は記憶に残る夜になることだろう。

なお、この記念すべき10th Anniversaryの最後を飾るライブの間中、わたしのズボンのチャックがずっと開きっぱなしだったことは書き加えておかねばなるまい。

 

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