最近依存症に関する本をいくつか読んでいて、その流れでKindleのオススメ欄に出てきたこちらの本も読んでみることにしました。
わたしがなぜ依存症に興味を持っているかというと、自分がすごく依存傾向が高い人間だということを認識しているからです。
親戚にギャンブル依存者がいることもあり、いつ自分もダークサイドに転落するかわからないという危機感から、依存に関する知識をなるべく多く吸収しようとしています。
どんな内容の本なのか
作者のデイミアン・トンプソンは本書の中で一貫して「依存症は病気ではない」というスタンスを貫いています。
確かに、依存症はきっかけさえあれば誰でも陥る可能性があるものです。更に依存症の人の脳と恋に夢中になっている人の脳のあいだで脳内物質の違いが見られないなど、依存症を「病気」と定義するのは無理がある、というのが筆者の主張です。
この前提にもとづき、本書ではスマホ依存や砂糖依存などわたしたちの身近に潜む依存の罠からヘロインやMDMAなど違法薬物に対する依存まで、幅広く解説されています。
「へぇ〜」と思った部分
ドーパミンは快楽より欲望に深く結びついている
ドーパミンと聞くと「快楽物質」というイメージが強いですが、最新の研究では快楽というより「欲望物質」なのだそうです。
たとえばTwitterのタイムラインに美味しそうなスイーツの写真が現れたとして、その写真を見て脳内では「これ食べたい!」と思ってドーパミンが放出されます。
しかしドーパミンは「欲望物質」であって「快楽物質」ではないため、スイーツへの渇望感は掻き立てられるものの、スイーツを食べた後の「快楽」は得られないのです。
脳内にドーパミンが放出されると「ストップアンドゴー」のうち「ゴー」の指令が強力に働いて人間は「衝動的な」行動を取ってしまいます。
その結果がスイーツのドカ食いというわけです。
スイーツ以外の場合も同様で、アルコールでもギャンブルでも違法薬物でも一緒です。
何らかの外部刺激によって脳がアルコールなりギャンブルを想起させる「きっかけ」に触れると、脳内にドーパミンが放出されて欲望が暴走し、良くないとわかっていても依存物質に手を出してしまう、ということです。
このような仕組みをこの本で知ることができたのは収穫として大きいです。
自分が依存物質に手を出しそうな時に脳内で何が起きているかを知っているのと知らないのとでは対処の幅に違いが出ると思います。
「まず敵を知れ」といった感じですね。
ギャンブル依存とソシャゲ依存はほぼ同義
この本にはアルコール依存や薬物依存など昔からある依存だけではく、最近新しく出てきた依存についてもたっぷり書いてあります。
リアルのギャンブルは十分な軍資金や余暇時間がないと出来ないけど、オンラインギャンブルにはその障壁がありません。多くのギャンブル依存者を生み出したオンラインギャンブルですが、2006年にアメリカでオンラインギャンブルが違法化されたことを機に風向きが変わります。
それまでオンラインギャンブルを開発していた会社や技術者たちのリソースが一気にオンラインゲームへと向かったのです。
その結果、ギャンブル要素をふんだんに含んだ依存性の高いゲームが大量に市場に出回ったというわけです。
ゲーム会社によって緻密に計算された、ユーザーを引き付ける数々に仕組みによって今や従来の主流であった男性ユーザーばかりでなく、多くの女性ユーザーもゲーム依存に陥っているのです。
かく言うわたしもゲームをやめたいなぁと思ってやめられないことが多々あります。特に「女性向け」に開発されたと本の中で解説されていた「コミュニティ機能」は確かにゲームから足を洗いづらくさせているなぁ、としみじみ感じます。
スマホゲーはまさに「無料で次々と手に入る電子ドラッグ」。恐ろしいものだと認識しておかなければならないです。
依存者は人をモノで置き換える
筆者がなんども繰り返し書いていたことのひとつに「依存者は人をモノで置き換える」ということがあります。
一番わかりやすい例として、アルコール依存者が人をアルコールに置き換える過程が紹介されていました。
具体的には、今まで友達と過ごしていた時間を家にこもって酒を飲むようになる。友達を酒で置き換えてしまうのです。
これと同じようなことがSNS依存にも言えて、まるでモノを扱うかのように人間をブロックするという現象がみられます。
これから自分が何かに依存してしまいそうになった時、人をモノで置き換えていないかをセルフチェックしようと思いました。
ほかの本ではあまり語られていなかった「ポルノ依存」
今までに何冊か依存症の本を読んだり依存症に関するドキュメンタリー映画を見たりしましたが、もっとも世界に蔓延している依存症ともいえる「ポルノ依存」についてしっかりと書かれている本はこれが初めてでした。
ここでも「人をモノで置き換える」プロセスが発生しており、オンラインポルノを使えば相手を口説くプロセス抜きで快楽を得られる、というモデルになっています。
世界中で静かに蔓延するオンラインポルノ依存が実際の男女関係に悪影響を与えているのはもちろんのことです。
この本には書かれていませんでしたが、わたしは個人的には日本の少子高齢化の原因もこのオンラインポルノ依存の蔓延にあるのではないかと考えています。
おわりに
わたしはTwitterが始まったころからガラケーを用いてのTwitter中毒ですし、その頃はガラケーでできるゲームにもどっぷり依存していました。
そのあとはスマホ依存、SNS依存、向精神薬依存、砂糖依存、ゲーム依存と依存度に強弱はあれどさまざまな依存経歴を辿ってきています。
今回読んだ「The Fix 依存症ビジネス 「廃人」製造社会の真実」は、今まで読んだ本の中で一番網羅的に依存症について書かれていると感じました。
ちょっと長い本ですが、依存症について危機感を抱きたい方にはぜひ読んでほしいオススメの本です。